すべてのメニューには物語がある

あらゆる料理やお酒には、誕生までのストーリーや「誰がいつ、どのように楽しみ、愛したのか」という物語があります。「AFTER THE RAIN」は、その物語を大切にしたいと考えています。これまでライターとして活動してきた経験を生かして、お客さまに楽しんでいただくために何ができるのか。考え抜いて、辿り着いたひとつの答です。
何十年も調理の世界に身を置いた職人の仕事には太刀打ちできません。でも、ユニークな背景を持っている料理を探し出したり、日本全国の一流の味を厳選したり、お酒の来歴を紹介するセンスと能力は、長年の取材と食べ歩きをとおして磨き上げてきたという自負があります。ATRが提供するのはお酒が進む料理であり、料理の味を広げるお酒です。それぞれの物語も大切な“肴”なのです。
食事、またはお酒の最後に丹念にひいた鶏スープをお出ししています。店を出る前に、ほっと一息ついてほしいから。無料サービスですので、お気軽にお申し付けください。
歴史と新たなる出発
1979年11月16日、博多駅前に小さなパブ「AFTER THE RAIN」が産声をあげました。店主は河原成美氏、今や「博多 一風堂」などを全国展開する力の源カンパニー代表が最初に立ち上げた飲食店です。
当時、ATRには連日若いクリエイターやメディア関連の人たちが集い、活況を呈しました。クリエイティブな人々を引き寄せたのは河原氏のパフォーマンス。「店の端から端までクロールで泳ぎ、背泳ぎで帰ってくる」「カウンターの上に立って、一晩中歌い続けた」など河原氏の驚くべきサービス(?)は、いまなおATRの伝説として数多く残っています。
創業3年目に中央区今泉に移転。スタッフにも恵まれ、福岡で活躍する料理人を多く輩出する店となりました。99年からは創業メンバーでもある2代目オーナー西村小太郎氏が、河原氏のDNAを引き継ぎ、営業を続けてきました。
創業から28年、福岡にあるバー業態の草分け的存在になった店は、08年3月に“21世紀型の飲食店”として生まれ変わりました。ベースにあるのは河原成美のDNA。「変わらないために、変わり続ける」「料理を作るのではなく、ありがとうをつくる」「店は自分の子どもと思え」「みんなの笑顔が力の源だ」「個人として尊重された瞬間にお客様の心に喜びが湧き上がる」など創業者の教えを守りながら、新しい領域に挑戦します。
バック棚に並ぶ書籍

カウンターの奥、ボトルが並ぶ棚の上段に、数多くの本を置いています。ラインナップは、再現したメニューが登場する小説やエッセイをはじめ、これから挑戦したいと考えている料理のレシピ集や、酒にまつわる本、自分たちの人生において大切な本など様々。
ご興味を持ってくださったら、お気軽にお声かけください。気に入った本を読みながらグラスを傾けるのも、また一興です。
カウンターとテーブル

13席のカウンターと奥向かって右の大テーブルは、25年前に今泉に移転した頃からそのままの状態で残っています。彼らはATRの歴史のすべてを見守ってきたのです。
作者は家具工房『ラントマン』代表で、創業者・河原氏のお兄様でもある河原美比古(かわはらよしひこ)氏。ところどころ反ったり、曲がったりしていますが、それも木が生きているからこその味わい。店の守り神として、毎日、ていねいに磨きあげています。
エントランスの絵画
入り口のドアを開けた正面と左手の壁に、赤が印象的な絵画を飾っています。これは福岡在住の画家で、ニューヨーク近代美術館(MOMA)に日本人として唯一、作品が収蔵されている滝純一先生の作品。ダイニングバーという環境に合わせて、ワインと食べ物をモチーフにした静物画をご提供くださいました。入店時、あるいはお帰りの際に、ぜひじっくり鑑賞してください。
壁を彩る11枚のフォトグラフ


白壁を飾る11枚の写真は、福岡を代表するデザイナーのひとり、石川博己氏によるものです。写真家としても高い評価を得ている石川氏が、毎月テーマを絞って11枚の写真を展示します。
なぜ、11枚なのか。12は完全数であり、時間や年月の基準ともなる数字です。そこに1枚欠けていることで、「常に至らない自分たち」を自戒し、かつ「いつの日か完全を目指す志」を静かに表現しています。今月のテーマは「海」、福岡の西から東まで、様々な表情を見せる海を感じてください。
スタッフ
オーナー:元木哲三(もとき・てつぞう)
福岡市出身の1971年生まれ。雑誌記者、プロミュージシャンなどを経て、東京でフリーランスライターとして活動。2004年4月から上海に拠点を移し、08年1月に帰郷。現在も執筆活動を続けている。趣味は妖怪研究。
マネージャー:栗田真二郎(くりた・しんじろう)
福岡市出身、1973年生まれ。雑誌記者を経て、フリーライターに。グルメライター、コピーライター、シナリオライターとして福岡を中心に活動するかたわら、ラジオDJ&コメンテーターの経験を持つ器用貧乏。趣味は『タモリ倶楽部』を独りで鑑賞すること。無類のタモリ好き。
ATRのスーパーバイザー(順不同)
河原成美氏
言わずと知れたATR創業者。日本最高のラーメン職人であり、「博多 一風堂」などを展開する株式会社力の源カンパニー代表取締役を務める。
栗田善成氏
絶大な人気を誇る福岡のラジオパーソナイティで、マネージャー・栗田真二郎の実父。
滝悦子さん
福岡を代表する女流“辛口”エッセイスト。飲食店のプロデュースも数多く手がけている。
伊豆美沙子さん
亨保2年(1717年)創業以来、280年余り続いた「蔵元」の娘として生まれOL生活を経て、現在、酒のプロデュースと営業にあたる。ATRの清酒セレクトを担当。
友添けんじ氏
「酒の専門店 友添本店」店主。地酒、地焼酎に精通。ATRでは焼酎の品揃えをプロデュース。
中村浩一氏
ワインの角打ちでも有名な「酒屋ナカムラ」ディレクター。ATRではメニューに合うワインをセレクト。
