「物語の構造を体験してみる」というのはよくわかったけど、物語をつくるうえでのアイデアがなかなか浮かばない。「小説は誰にでも書ける!」で出てきたプロットカードをひいてはみるものの、そこからストーリーをなかなか展開できない。

 

そんな人は、おそらく少なくないはず。

果たしてアイデアはどのようにして生まれるのか。

「黒い家」「悪の教典」「青の炎」などベストセラーを次々に発信している小説家の貴志祐介氏は「エンタテインメントの作り方」でこう述べています。

 

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「アイデアがどこからやってくるかというのは、誰にもわからない。ただひとつだけ、言えることがある。アイデアというのは、じっと待っていれば天啓のように降ってくるものではない、ということだ。何かを成し遂げたいと思ったら、待つという受け身姿勢でいては駄目だ。(中略)面白い物語を築くためのアイデアも、天から舞い降りてくるのを待つのではなく、自分からつかみに行くものなのである。」

 

ミステリー界の大御所でさえこんなことをおっしゃるのです。

それでは、貴志さんはどのようにして作品を書いているのでしょうか。

 

アイデアノートを常に持ち歩こう

 

貴志さんは、思考訓練としてたびたび「もし〇〇が××だったら」という想像を巡らせているといいます。そのままだと何の変哲もない出来事でも、極端にエスカレートさせてみたり図式を逆転させてみたり「ひとひねり」して考えてみるのです。例えば、貴志さんはインフルエンザで寝込んでいた際「もしもインフルエンザ・ウイルスがもたらすものが“苦しみ”ではなく“快楽”だったら――」ということを考えたそうです(実際にこのアイデアはとある作品に使われています)。この「もしも〇〇が××だったら」を連想ゲームのようにしてふくらませていけば、何だか物語はどんどん生まれてきそうな気がしてきます。

 

重要なのは「もしも〇〇が××だったら」といったアイデアは、どんなに小さなものでも必ず書き留めておくということです。お笑い芸人がネタ帳を持ち歩くのと同じで、小説を書こうと思うのなら思いついたものや気になったものは常にメモをするクセをつける。そこから、いつ、どんな形で作品になるかわからないのですから。

 

というわけで、まずはお気に入りのノートを買いに行くとしましょう。