「2週間で小説を書く!」の実戦練習第4回目です。
第4弾「BGM物語」
三種類の音楽を選んで用意する。まったく曲の雰囲気が異なることが望ましい。早いテンポの曲、リズミカルな重々しい曲、抒情的な緩やかな曲というように、バラエティーの組み合わせが大事だ。(中略)それらをBGMとして、ストーリーや場面を書く。たとえば三種類の音楽の場合、三つの場面を分割して書いてもよいし、ひとつながりの物語になるように書いてもよい。書く量は費やせる時間に応じて決めればよいが、あまり欲張って長編を書こうなどと思わないことだ。書く場合に心がけてほしいのは、できるだけ目に見えるような描写を入れてほしいということである。
というわけで書いてみました。
これが、なかなかうまく書けなくて何回も書きなおしました。
(うまく書こうとするから失敗するのでしょう……)
なんだか気恥ずかしいですがそんなことを言っていては小説は書けないので公開します。
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蔦に覆われたその洋館は、亡霊のように、海辺にひっそりと建っている。
でも、彼は知っていたのだ。そこは人々が噂をするような「幽霊屋敷」ではないことを。
一室には、ブロンドの柔らかな髪を横に束ねた、今にも消えてしまいそうなほどかよわい少女がいることを。
彼女は毎晩、ベッドから月を眺めていた。
否、月そのものではなく、海に浮かぶ月を眺めていた。
彼は毎晩こっそりと部屋に忍び込み、彼女と内緒の時間を過ごす。
「どうして君はいつも窓の外を眺めているの?」
「私には到底触れられない景色だからよ」
「どうして月を見ているの?」
「真っ暗な闇に浮かぶ月の光は、まるでスポットライトみたいでしょう」
「スポットライト?」
「ええ。このときだけは、世界中の光が私を照らしているように見えるの」
「月をひとりじめできたらいいのにね」
彼女は小さく微笑むと、目を閉じてゆっくりと眠りにつく。
弱々しく震えるまつ毛が、月あかりに照らされてかすかに光った。
翌晩、彼は逸る気持ちをおさえきれずいつもの時間より早く彼女のもとへと走った。
早く会いたい。早く、彼女の笑顔を見たい。
手には海水を詰めた小瓶を抱えている。
しかし、待っていたのは無人の部屋だった。
朽ち果てたベッドを、月光が優しく照らしている。
冷たく乾いたにおいが鼻をかすめた。
窓辺にそっと置いた小瓶には、偽物の月が揺らめいていた。
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いろいろな曲で試した結果、ドビュッシーのベルガマスク組曲を聴きながら書くことにしました。
構成は4曲なので第1曲「前奏曲」第2曲「メヌエット」第3曲「月の光」から。
とはいえほぼ第3曲「月の光」で構成されている物語に……。
あとタイトルにだいぶひっぱられている感じもしますね(;´・ω・)
とはいえ何ごとも書くことが大切!と言い聞かせます。
第4曲「パスピエ」は個人的に明るくて温かな春のイメージ。
このお話にも、いつかチャレンジしてみます。
さてさて清水さんは本書の中で「細部を書き込むことでその場に読者の身体が誘い込まれて、作中人物と同じようにその場の雰囲気を味わうことができる」とおっしゃっています。ただ単に「美しい」「かわいい」などと書くのではなく、その姿や振る舞いが眼前に浮かび上がるように書く、つまり「描写」をすることで「美しさ」や「かわいさ」を読者に伝えることが「小説の力」なのだ、と。
音楽から連想してどんなストーリーを生みだすことができるか。
最初は「妄想力が必要だな」と思っていましたが、終えてみると、つまるところこの実戦練習は「五感」をいかにして文章に落とし込むかの特訓なのだなと感じました。
繰り返していると随分と力になりそうです。
また折を見て挑戦してみます。
次回、実戦練習第5弾は「人称を変える」。
なんだ、それは!?