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[書く力]

No.15

Q&A

文章に関する悩みをズバッと解決!

Q.どうしても「!」がやめられません!

古林咲子

文章技術というよりも、

個人的な悩みです。

 

32歳、ライター歴6年目です。

 

仕事で原稿を書くときやビジネスメールでは問題ないのですが

社内の人や親しい間柄の取引先など、

ざっくばらんにお話できる相手にメッセージを送るとき

文末に「!」や「っ」、「★」「(*^_^*)」を付けずにいられません。

 

あるとき「あなたってメール本文に!が多いよね」と

言われたのを機にできるだけ減らすように頑張っているのですが

「!!!」を「!」にするのがやっとで

ゼロにすることがどうしてもできないのです。

 

試しに一度、すべてを句点に置き換えてみるのですが

そうした後に読み返してみるとどうにも落ち着かなくて

「!」を付け足してしまいます。

 

いったい、どうしたら良いでしょう。

というより、どうして「!」をつけないと不安なんでしょう!

A.なぜ悩んでいるのでしょうか。まったくかまわないと思うけど。

元木哲三

すでに質問の中に答えが書いてあるように思えるのですが、興味深いテーマですし、一緒に考えてみましょう。

 

まずは文章における「記号」の取り扱いについて、ぼくの基本的な態度を示しておきたいと思います。広い意味で言えば、文字も記号ですが、ここでは文字以外のしるしのことを「記号」と呼ぶことにします。

 

ぼくは自分が書く文章について、もし「なぜ、そう書いたのか」と問われたら、「ある程度は論理的な説明ができるように心がけよう」と考えています。言葉の選択はもちろんのこと、読点を含めたすべての記号についても、使った理由を明確に語れる状態が理想です。

 

もちろん、問いを続けていけば、最後の最後は「そっちのほうが良いと感じたから」といった好悪の問題に還元されるのでしょうが、でも最初から「なんとなく」はだめ、というのが自分に課しているルールです。

 

そうすると、記号に関しては、極めて抑制的になります。たとえば

 

 

<例文1>

「ウイスキーになさいますか? それともブランデー?」

 

 

と書いてみるとき、最初の「?」は、なくても意味が十分に伝わるのではないか、と考えてみる。つまり

 

 

<例文2>

「ウイスキーになさいますか。それともブランデー?」

 

 

これで意味は通る。では、最後の「?」は必要か。

 

 

<例文3>

「ウイスキーになさいますか。それともブランデー」

 

 

「ブランデーにしますか」の「にしますか」が省かれていることは明らかなので、「?」をつけなくても、話者が問うていることは万人が理解するでしょう。ただ、文章は音としての表現が限定的なので、これだと語尾が上がっている感じが出ません。

 

「疑問形でも語尾を上げないキャラクター」という設定ならばいいのですが、より自然に読めるのは<例文2>だと、ぼくは判断します。

 

というわけで、本当はあまり「?」を使いたくないんだけど、やむにやまれず、<例文2>をぼくは採用しますし、もし問われれば(いや、誰も聞いてくれないけどね)、前述のような論理で説明することになります。

 

 

ライターは表記に保守的であるべき

 

クエスチョンマークもエクスクラメーションマークも、本来、日本語にはなかったものです。また、ハートや星形、顔文字などの記号は、他の言語で使われている記号でさえありません。

 

ぼくは文章を書くとき、基本的に伝統的な日本語の表記法の範疇で表現しようと努めます。職業的なライターは、より多くの読者にとって「リーダブルな文章であること」を求めるべきであり、だから表記法に対しては可能な限り保守的(伝統を重んじる態度)であるほうが有効だと考えるからです。

 

そして、本音を告白するならば、これは個人的な感覚ですが、記号が多用された文章は下品に思える。それに「記号を使わなくとも、文体やレトリックで感情や状況は表現できるはずだ」という物書きとしての矜持みたいなものも、ぼくの中に潜んでいるように思えます。なんだかちょっと嫌なやつですね。

 

いずれせよ、ぼくには「読点」も含めて、可能な限り記号の使用を抑制しようとする傾向があります。自らの信条に従ったコントロールの結果ですが、「そのほうが自分の求めるソリッドな文体に近づける」という、結局は好悪の問題で判断しているのかもしれません。

 

 

オンラインではどんどん使えばいい

 

質問には「仕事で原稿を書くときやビジネスメールでは問題ないのですが」とありますから、それはおそらくぼくの考えに近いということでしょう。気が合いますね(今、ハートを書きたい気持ちを、ぐっと抑えた)。

 

一方で個人的なメールやSNSでは記号や顔文字を多用してしまう、と。いいじゃないですか。だって、その目的は「特定の相手に、自分の言いたいことや気持ちを効率的に伝える」ことにあるだろうから、です。

 

当事者間で了解ができていれば、たとえば星のマークは「愛している」の意味だとしてもいいわけです。二人だけにしかわからない秘密の暗号。うーん、やったことないけど、これちょっとドキドキしますね。

 

実はぼく自身、以前は頑なに(笑)とか(泣)というのを使わないようにしていたんです。でもね、たとえば「使っている言葉は厳しめだけど、実は微笑みながら書いている」といった自分の心の状態を表現しようとすると、けっこう長く書く必要が出てくる。一方でチャットのやり取りはタイミングが勝負ということもけっこうあって、考えている間に話題が移ってしまう、なんてこともありました。

 

そんなとき、「もういいや!」と思って、(笑)を使ったら、まあ、これが便利で。これまで我慢してきたのは、なんだったのだろう、と。今ではコメント欄のやりとりにも、けっこう「!」や「(笑)」を使用しています。

 

さすがに顔文字は使わないけれど、かといって否定しているわけではありません。簡易に自分の気持ちを伝えられるという点では、新しい、そしてとても便利な記号だと言えるでしょう。

 

というわけで、とくにオンラインコミュニケーションでは、どんどん使っていいんじゃないでしょうか。そのほうが、やりとりが円滑になるから、「やめられない」のだと思うのです。やめなくていいじゃん。それがぼくの答えです。

 

ただ、ちょっとだけ心配なのは、「どうして『!』をつけないと不安なんでしょう!」と書かれている点です。自分でつける理由がわかっていない。選択ができていない、ということですよね。

 

繰り返しますが、記号や顔文字が活きるためには、対話する相手との親密な関係が前提になると思います。

 

「はじめてご連絡差し上げます٩( ‘ω’ )و」

 

とは、なかなかならないでしょうし、

 

「娘の命を救ってくださった先生に心からの感謝をお伝えしますm(_ _)m」

 

とかいうのも、おかしいしね。

 

「!」であっても、使われるからには、やっぱりそこには一定の親密な関係が読み取れるはずです。つまり、相手は「!」を使うくらいには心を許しあった関係なんだな、というメタメッセージを読み取ります。

 

あなたが「!」をつけずにいられないのは、そうした関係性を確認し続けたいからかもしれません。ここから先はライターが取り扱える領域ではないので、本当に心配ならば専門家にアドバイスを請うてください。

 

ただ、このように、自分の発する言葉に注意することは、とても大切だと思います。実際に会って話していれば、相手の表情や態度から、自分が「場違いな言葉やトーン」で話してしまったことに気づけます。でも、文章のやり取りだとそれが難しい。記号一つにも繊細になれるって、素晴らしいことだと思いますよ。

 

あ、なんか最後、いい人みたいになってしまって恥ずかしい!(←もちろん、計算尽く)

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[書く力] No.16

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文章に関する悩みをズバッと解決!

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