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[書く力]

No.24

Q&A

文章に関する悩みをズバッと解決!

Q.インタビューをする際、相手の本音を引き出すために、心がけていることはなんですか?

※とある青年からの質問です。インタビューに関することですが、お答えします!

A.その「本音を引き出そう」って魂胆が、すでに相手にばれてますよ。

答える人: 元木哲三

聞かれて初めて意識しました。どうやらぼくは、これまで「本音を引き出そう」と考えたことがないようです。そして、もしあなたがそう考えているならば、インタビュイーが心を開く可能性は低いでしょう。ほら、人って腕をぎゅっと引っ張られたら、反射的に逆方向に重心を乗せるでしょ。無意識に抵抗しちゃう。対話も同じだと、ぼくは思うんです。

 

「本音を引き出そう」って魂胆は、確実に相手に伝わります。しかもそれは「相手は建前で話している」という認識が、前提になっているわけで、残念ながら、それもばれています。インタビュイーは意識、無意識に関わらず、あなたのことをすべてお見通しなのです。

 

怖いですね。でも、だからこそ畏怖してください。相手が無名であれ、子どもであれ、もっと言えば犬であれ、ひとたび聞く側に回れば関係性をいったんゼロにして対峙する。これがインタビューの最低限の準備だと、ぼくは考えています。

 

 

全身を開いて受信する

 

じゃあ、ぼくはいったい何を心がけているのか。インタビューの際は、相手の言葉をできるだけ正確に理解しようと努めます。言葉の意味はもちろんですが、声の高低、音質、音色、咳払い、唾を飲み込む音の大きさ。表情、ちょっとした目の動き、手の動かし方、飲み物を口にするスパンなど、とにかく観察と受信に集中しながら、「本当は何をお話しになりたいんだろう」という問いを繰り返すことで、自分の理解をまとめていきます。

 

もちろん、言葉の意味、話の内容は重要ですし、それがわかっていなければ次の質問さえできませんから、ストーリーは追いかけています。同時に非言語的な情報の収集にリソースを割く。パラレルというか、複数のチャンネルを開いて交信している感じです。

 

カウンセラーと話をすると「相手の話はあまりまともに聞いていない」という方の多さに驚きますが、感覚的には理解できます。比喩的に言うならば、「相手の頭の後ろを見ている」ような感じ。もちろん、視線は相手の顔にぼんやりと向けていますが、むしろ背景を読んでいる感覚です。その人が語るストーリーよりも、「本当に伝えたいこと」を重視する。そのためには、(比喩的に言えば)「全身を開いておく」ことが大事なんだと思います。

 

 

誰もが超能力を使っている

 

こう言うと、なんだか専門的な能力のようですが、ぼくの観察によると小学3年生(この場合、主に女子で、男子が開花するのは早くて5年生←苦笑)は、そのような「メタメッセージを読む対話」を十全にこなしている。すごいもんだな、と感心します。

 

その意味では人間は誰もが、とんでもない能力を持ったクリエイティブな存在なんです。対話って、超能力です。いや、誰もができるわけだから、「超」じゃないんだけども、そう言わないと伝わらない。もし、ぼくに人と違う点があるとすれば、対話をそのような超能力であると言語化して認識して、実践しようと努力していることかもしれません。

 

 

インタビュアーとしての喜びとは?

 

さて、そのようにして、水面下で必死に足を動かしている白鳥、いやガチョウのようにして相手の話を聞いていると、場合によっては、「これまで考えてもみなかったことを話せたな」と言ってもらえることがあります。いや、考えてもみなかったことは話せませんので、それは勘違いなんです。あくまでインタビュイーが獲得した言葉なんです。ただ、質問に答えることで論理的に構造化した、ということなんでしょう。

 

でもね、こういう瞬間に立ち会うと、「ああ、インタビューっていいなあ」と思えますし、少しは自分を褒めてもいいような気分になれます。

 

今回の質問に即して言うならば、インタビュイーにとっては「これまで意識していなかった」ことだったわけで、これが「本音を引き出した」瞬間なのかもしれません。でも、繰り返しますが、それはあくまで結果であって、目的ではない。目指すのは「相手が本当は何を伝えたいのか」を考えまくる「受信機」になることなのですから。

 

 

執筆の義務さえなければねえ……

 

インタビューはぼくにとって、とても創造的で楽しい仕事です。ライターの皆さん、「ああ、インタビューだけで仕事が終わればいいのに」と考えたことがないとは言わせませんよ。そう、インタビューが終わった瞬間は、何かをやり遂げた歓喜の瞬間であるとともに、執筆という労苦が待つ地獄の入り口でもあるわけです。

 

もちろん、「インタビューは楽しい!」と言っても、終わればどっと疲れます。多くの場合、それは心地よい疲労ではあるものの、人の話を聞くというのは、だからやはり骨の折れることなのです。他のあらゆる仕事と同様に。それでも、ぼくは今日も、人の話を聞きに東へ、西へ。結局のところ、好きなんでしょうね。

 

などと、書いてみましたが、さて、これってぼくの本音だと思います?

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