前回から引き続き、「2週間で小説を書く!」の実戦練習をやってみます。

2週刊

 第3弾「最初の記憶を書く」

最初の記憶がどんなものだったか、いざ思い出そうとすると、けっこう難しい。たいてい記憶はぼやけている。ある断片的な部分だけのイメージであることが多い。すると文章にしてみようとしても、因果関係や話の筋としては書けなくなる。そこが、しかしこのモチーフの面白いところなのである。

 

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「だるまちゃんとてんぐちゃん」

大好きなお話だ。昨日も、家で読んだ。

先生がみんなの前で絵本の表紙を見せながら

「まだもじがわからないおともだちもいるので、せんせいがよみます。みなさんしずかにきいていてください」

と言った。

「えー! よめるよ」

私の言葉に先生は眉毛をつりあげさせてギロリとこっちを見た。

「よめないおともだちもいるんです。そういうことはわざわざいわなくていいの」

だって何回も家で読んでるもん。文字だってぜんぶわかるよ。すごいでしょう。

このまえもかずくんのママから「なんでもよめてすごいね」って言われたし。先生も褒めてくれると思ったのに、なんで?

周りの友だちがじっとこっちを見ている。顔があつくなった。

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幼稚園年少の頃の記憶です。

ここの部分だけやけに覚えていてあとはぼんやりしているのですが、清水さんは「それで良い」とおっしゃいます。

 

注意点としては、あらすじにしてしまうと空疎な、わけのわからない内容にしかならない。意味や筋を問わずに、目に浮かんだ情景や、身体で感じた印象をできるだけリアルに描写することに専念しよう。ぼんやりした記憶だとしても、そのぼんやり具合をリアルに再現するのだ。この文章は断片のままでいい。前書きや後書きは要らない。

 

ここでいう「前書き」とは「それは今となってはいつのことか明らかではないが……」という言い訳めいた書き出しのことで「後書き」とは「後に母に聞いたところではそのときの私は……」と、後付けで意見や情報を添えること。

 

これらをできるだけ排除して純粋に断片のイメージの描写だけに専念することがここでの練習目標なのです。

 

五感をとぎすまして記憶を呼び起こすと臨場感が出る

 

清水さんはこの章で「とにかく創作メモを用意しなさい」と言っています。

ストーリーの続きのアイデアを書くのももちろん良いが、何より小説において大事なのは「細部」なので、日々の観察の中で感じたこと・イメージをただ書き連ねておくことが大切だ、と。

小説に「五感」を用いることで、作中人物と同じようにその場の雰囲気を読者に味わわせることができるのです。そういえば以前、「漁港の肉子ちゃん」(西加奈子)を読んだときは、磯の香りや海のさざなみ、むわんとした夜の雰囲気などが瞬時に浮かんでしばらくストーリーの中から抜け出せなくなったことがありました。それはやはり変な前書きや後書きを使わずに著者自身が感じたものだけをそこに描いていたからなのでしょう。

 

Don’t Think.Feel!

 

ですね。