書く才能は、生まれもったものなのか。
「書くチカラ」には「文章術のほとんどは形式知化できる」と書かれています。
この話が本当なら、技術を身につけることさえできれば誰だって小説家になることは可能なはず……!
実は、それを証明する本があります。トレーニングを積みさえすれば、誰でもどんどん物語を作れるようになるという前提のもと、具体的な小説練習法を公開している「物語の体操 物語るための基礎体力を身につける6つの実践的レッスン」(大塚英志・著)です。
大塚氏は、
1『公募ガイド』の類を買って小説の新人賞に応募しようと思ったことがある。
2新聞や文芸誌に載っている「あなたの原稿を本にします」なる広告がとても気になっている。
3小説家養成コースのある専門学校にうっかり入学してしまったか、あるいは入学しようと思っている。
といった方々にこの本は有益である、と話しています。
ああ、当てはまるなあ。中学3年生の頃に「直木賞をとる」と将来の夢に書いたあの頃の私、小説なんて一度も書いたことがなかった。
それは何故か。漠然と小説家になりたいと思っているが、何を書けばいいかは、わからないからです。だって、話が思いつかないんですから。でも、小説家にはなりたいんです。何となく、書ける気はしているんです。これが「なかなか書けない(正確に言えば書いてない)」理由でしょう。
しかし、大塚氏は「小説で何を書いたらいいのか。答えは単純です。<おはなし>です。」と断言します。いやいや、その<おはなし>が思いつかないから悩んでいるんだよ! と、言いたいところですが、この本はいとも簡単に、その<おはなし>を生み出す方法を教えてくれるのです。
使うのは「カード」だけ。
カードがあれば10分で<おはなし>が誕生する
まず、以下のように計24枚のカードを作ります(かなり手作り感満載!)。
これをすべて裏返し、シャッフルし、6枚を無作為に抜き出してこの順に並べるのです。
例えば、このように引くとします。
カードが逆向きの場合は正反対の言葉になります。
これをもとに、私も<おはなし>を考えてみました。
いじめっ子として有名だった主人公・ケン(善良(逆))。しかし、両親や信頼できる先生との出会いにより(庇護)、社会人となった今は、つきものが落ちたかのように大人しい。会社の後輩たちからは慕われ、彼女にも恵まれている。ケンの過去を知ると驚く人ばかりだ。そんな中、こんな法律ができた(秩序)。「過去にいじめをしていた人間は、それと同等の苦しみを味わうこと」。これにより、ケンはまるで村八分のような目に遭い、人間不信に陥る(変化)。しかし、学生の頃にいじめていた真面目が取り柄のユウトだけは違った。「こんな法律は間違っている、一緒に戦おう」と言ってくれたのだ(理性)。二人は助け合いながら(知恵)法律に真正面から立ち向かう――。
いろいろとつっこみどころはありますが、だいたい6分くらいでできあがりました。なんとなく、児童書や少年漫画にありそうではないですか?
このおおまかな<おはなし>(いわゆるプロット)に肉付けをしていけば、小説は完成するのです。何だか一気に、小説を書くことへのハードルが下がった気がします。
あ、カードは何回引き直しても良いですが、自分に都合よく並べ替えるのは反則です。
さあ、さっそく<おはなし>を100個考えてみましょう。
まだまだこれはトレーニングの序章に過ぎません。