物語を書く上で大切なプロットの作り方は、なんとなくわかりました。

(ほかにもまだまだ方法はあるので今後も紹介します!)

ところで、物語の中で動きまわる「キャラクター」はどのようにして作ると良いのでしょうか。

 

「物語の体操」や「ストーリーメーカー」でおなじみ、大塚英志氏が説いています。

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もはや「物語る力」では、困ったときの大塚英志氏。

 

さて、ここでは「キャラクターづくりでは、直接的に「私」をカミングアウトしない技術が必要だ」と書かれています。

キャラクターとしての「私」に書き手の「私」が直接反映されてはいけない、と。

もちろん、1mmも反映してはいけないわけではありません。書き手の「私」の体験をキャラクターに投影することでよりリアルになることだってあるのです。

しかし、大切なのは商品として受け手に届くキャラクターの「私」は、単なる書き手の「私」の「告白」にならないよう、綿密に計算する必要があるということです。

 

そこで、キャラクターに与えられた「私」を作り手が自分の中の「私」と必要以上に混同しないために、こんなワークを提案しています。

 

自分の現在の両親が本当のお父さんお母さんではなく、本当の両親が別にいると想像する。そして、その本当の両親について考えた文章を、あなたの一人称叙述で短い文章にしてください。

 

何のためのワークだろうかと思うかもしれません。

この「自分の親は別にいるのだ」という空想は「ファミリー・ロマンス」と呼ばれ、幼児が親から分離する過程こそ、子どもの自立のためには必要だといいます。つまり、キャラクターを物語の中で成長させるうえで「ファミリー・ロマンス」は欠かせないキーワードだということです。さあ、まずは自分だったら……を考えて、文章にしてみましょう。

 

キャラクターに「移行対象」をもたせると「私」との距離ができる

 

さらに大塚氏は、子どもの自立のためには「移行対象」が必要になる、とも書いています。

たとえば「スヌーピーとチャーリー・ブラウン」のライナスがいつも手にしている毛布。あれは、幼児から成人に至るまでの儀式として必要なものだと心理学でも証明されているのです。このように、物語上のキャラクターに「移行対象」をつくることは、魅力的なキャラクターをつくりあげるために重要だと大塚氏は説いているのです(ちなみに宮崎駿監督でおなじみのジブリ作品に登場するキャラクターは「移行対象」を持っていることが多いようです)。

 

さて、ここでまたまたワークです。

 

主人公にとっての移行対象を作ってみよう。   

 

★ルール

1.主人公を一人つくる。何らかの「不安」「トラウマ」「未熟さ」を抱えることが必須条件。

2.主人公にとっての移行対象(キャラクターまたはアイテム)をつくる。主人公はこれをいつか捨てることで大人になる。

 

この2つのワークでは、どんなにフィクションをつくろうとしても、どこかで書き手である「私」がキャラクターに重なります。事実、ワーク1では自分の親が本当の親じゃなかった場合……を空想してキャラクターを設定しますから、完全にゼロの状態からつくることは難しいのです。しかし、その「私」の不安を「移行対象」として再びキャラクターやアイテムに落とし込むことで、本来の「私」と距離ができます。この考え方を繰り返すことで、書き手の「私」の不安を、キャラクターである「私」に直接的にカミングアウトさせない技術が身につくというわけです。