小説を書くうえで絶対と言っていいほど欠かせないもの。
それは「描写」です。
どんな人物なのか、舞台はどこなのかなどをしっかり描写できていない文章はなんだか薄っぺらく感じ、なかなか感情移入できません。
とは言え説明しすぎるとそれはそれでつまらない。
書き続けているうちに「どこを膨らませてどこを削ればいいのやら……」と悩んでしまうこと、ありませんか。私はかなりあります!
そこで、大沢在昌氏が「売れる作家の全技術」内で明かしていた虎の巻を紹介します。
大沢氏は、描写に困ったときには「天・地・人・動・植」の五文字を使うべし、と説いているのです。
天は「天候・気候」。
そのシーンの舞台は熱いのか寒いのか、雨は降っているのか太陽が照り付けているのか。気候を入れるだけでも光の具合や風の音、空気などあらゆる要素がそこから想像できます。それだけでグッとシーンの印象が変わりそうです。
地は「地理・地形」。
例えば、東京・新宿区に住んでいるとして、新宿の話だけではなく、その周辺の江東区や荒川区などの地理を説明する。「地形」とは、キャラクターが住んでいる家が「日の当たらない坂の下の薄暗いアパートの一室にある」というように書くイメ―ジです。地理と地形を加えると、より一層シーンに深みが出ますね。
人は、もちろん「人物」。
年齢、家族構成、友人などなど、キャラクターがより魅力的になるよう、変化をつけていきます。
動は「動物」。
登場人物がペットとして飼っているケースのほか、主人公が街中を歩いていてふと、道端で寝ている野良犬を見て「あれは俺だ」とつぶやく描写を入れれば「今この人は落ち込んでいる」という効果が得られるのです。
そして、植は「植物」。
街路樹や雑草などの描写をほんの少し入れると途端に文章がしまることがあるのだと大沢さん。
以上が「虎の巻」です。
たとえそれが情報の伝達のためだけのシーンであっても、動物や植物、あるいは天候や地理的条件を出すことで描写がふっくらするしシーンがより印象的になります。(中略)うまく描写するコツは、頭の中に自分だけの映画館を持って、そこで物語を上映してみることです。そこには音もあれば、光もあれば、匂いもある。人物がいて、空気が流れている。その空気を描写するという意識を持つこと。そうすれば、自然に「天地人動植」の要素が取り込めて、印象的なシーンができるでしょう。
※一部抜粋
執筆中につまずいたら、まずは「天・地・人・動・植」の五文字を唱えてみましょう。