あなたの書いた過去の話、ぼくのほうはすっかり忘れていましたが、それにしても、いったい何度、原稿を突き返したんでしょうかね。あなたも文章を教える側になったのでわかると思うけど、根気のいることなんですよ、150字に3日も付き合うのは。
さて、1日に1万字が書けるとしたら、ライターとして一人前と言ってじゃないかな。そんなに無理をしなくても(つまり適度に休日を楽しんだりしながら)、2週間ほどで書籍を1冊書くことができます。
もちろん、スピードだけでなく、クオリティも大切なのですが、実は書くスピードが速い人の原稿のほうが、質が高い場合がほとんどなので、「1日1万字書ける」というだけで、だいたいどれくらいの実力かがわかる。
だから編集者から「1日にどれくらい書けますか」と尋ねられると、「この人、わかってるな」と密かに思います。「1万5000字」と言いたいし、まあ、それくらいは可能なんだけど、あんまり期待されると後が怖いので、「1万字くらいですかね」と答えることにしています。
いずれにせよ、1日1万字、鍛錬によってもっと速度は高まりますが、合格ラインは突破したと考えていい。おめでとうございます。10年続けると、やっぱりいいことがあるんですね。
プロのライターはスピードが命
さて、質問の「文章を速く書くにはどうしたらいいか」なんですが、まずは「文章を速く書けるようになるんだ」と強く決心することです。
なんて答えると、「あまりにも当たり前のことを!」と怒られそうだけど、ここはとても大切。なぜなら、多くの人が、速く書くことの価値を、それほど重く考えていないからです。
30歳のときのことです。同じ経済誌(みんな知ってる全国誌です)に記事を書いている同世代のライターと食事に行くことになりました。実はライター同士って一緒に仕事をする機会がないから、なかなか知人、友人にならないんです。彼とは共通の編集者を介して知り合い、「酒でも飲みながら、お互いのことを話してみよう」となったわけ。
そこで意外な事実がわかりました。なんと、ぼくの年収は彼の2倍だったのです(それでも同世代のビジネスパーソンよりも少なかったけど)。
同じ雑誌で書いている、つまり文章の品質は同レベルなのに、なぜ? と驚いたわけですが、よくよく話を聞いてみると、彼は「締め切りを落としてしまうのが怖いので、あまり多くの仕事を請けていないのだ」と言います。
一方のぼくは「来た仕事は断らない。睡眠時間を削ればなんとかなる」と、そんな気持ちで書きまくっていました。つまり、ぼくは彼の2倍の量の原稿を書いていたわけです。
いま「睡眠時間を削って」と書きましたが、当然、それでは2倍にならないわけで、ま、ぼくのほうが、ずっとスピードが速かったんですね(ええ、ちょっとだけ自慢しています)。
というわけで、職業ライターになりたいのならば、まず「速く書けるようになる」と強く心に思うことです。多くの人が「うまく書けるようになりたい」とは考えるようですが、それだけじゃ足らない。同じくらい「速く書く」ことを意識して欲しいと思います。
自分がどれくらいで書けるのかを知る
前置きが長くなりましたが、じゃあ、どうすれば速く書けるようになるか。それは「時間を測る」ことです。
単純な話なんですが、「自分は何文字の、どれくらいの難易度の記事を、何時間何分で書けるのか」を知っておく必要がある。そのためにも、まずは測定することなのです。
自分のスピードがだいたいつかめてきたら、今度は目標を立てること。「これくらいの記事だと2時間だな。よし、1時間45分を目標にしてみよう」とかね。
漠然と「速くなるといいな」では能力は伸びません。書き始める前に目標を決めて、時計をちらりと見て、何時までに終わらせると確認してから取り掛かる。これだけでスピードは必ずアップします。
さて、あなたの言っている「書きながら構造を考えているから迷う」というのはそのとおりであり、大問題です。実はここに「速く書けない」「うまく書けない」「まとまらない」といった問題の理由の大半があるのですが、その件については、また別の議論としましょう。
それと、「集中力が散漫」という訴えに対しては一言。
知らんがな。