はい、これ、職業ライターであるぼくたちが、よく受ける質問です。確かに「どうやったらなれるのかが、今ひとつよくわからない職業」のひとつですよね。
よくわからない理由は、あなたがすでに書いている通り、「会社がない」ということでしょう。ある職業に就きたければ、その事業を営んでいる会社にアクセスするのが普通です。でも、ライターを雇用している会社が、ほとんどないんですよね。
これ、裏を返せば、ライターのほとんどがフリーランスだということ。資格もないし、社会的な基準もないし、だから、あなたの「名乗ってしまえばその日からライター?」という問いに対する答えは、ある意味で「YES」です。
もちろん、名乗ったからと言って、仕事がやって来るわけではありません。依頼を受けるためには、なんといっても「実績」が物を言います。でも、その実績をつくろうにも、つくるための仕事がない、というパラドクスに陥るんですよね。
カメラマンだと、「すでに名が売れている人のところで修行をした」とか、「これだけの機材を持っている」などといったアピールポイントがありますが、ライターの場合、アシスタントを雇用している人はほとんどいませんし、機材と言ってもパソコンくらいで、しかもスペックなんて関係ありません。
ぼくの場合、大学卒業後に福岡の小さな出版社に入社したのが、この仕事に関わるきっかけでした。このようにライターの中には出版社や編集プロダクションで働いた経験がある人が比較的多いように思えます。でも、そもそも東京の出版社に入社するのは難しいし、地方にはほとんどないから、「これが職業ライターへの道だ」と言われちゃうと、しょんぼりですよね。
ふー、やれやれ。どうしましょう?
何はともあれ実績をつくること
よし、じゃあ、真剣にライターへの道について考えてみます。いやね、そんなに特別な仕事じゃないんですよ。最初に必要なのは、きっかけです、きっかけ。
詰まるところ、繰り返しになりますが、仕事をとってくる上で重要なのは「実績」です。これがきっかけになるわけです。編集者の立場からすれば、どの雑誌で書いているかで、だいたいの力量や社会人としての常識を持っているかどうかがわかるし、実際の原稿を読めば、どのレベルの仕事を任せられるかすぐに判断できる。
で、実績がないんだったら、それはもう自分でつくるしかない。これ、「創る」って書いたほうがいいかもしれませんね。
質問には「エッセイはよく書いていて、公募ガイドに応募するのが趣味」と書かれています。正直なところ、「エッセイ」を持ってこられると、編集者としては「困った人が来たな」となるだろうけど、それでも雑誌に掲載されたり、賞をとったりしたことがあるのならば、実績に数えてもらえる可能性はあります。
あと、ブログを書いているのならば、これも「まったく何も書いていない」よりはずいぶんとましです。SNS、とくに文章ならばFacebookということになるのでしょうが、うーん、実績とするには、ちょっと厳しいでしょうね。
もし、そうした実績もないのならば、試しに記事を書いてみてはどうでしょう。たとえば、ぼくたちの会社は『クイッターズ福岡』というグルメ系のメディアを運営していますが、「行きつけの店で1本書いてみました」と提出されたならば、かなり興味を持って読むでしょう。
どうすれば仕事が取れるのか、という問いには、「これ!」という答えはありません。実績は必要だとしても、他の要素は巧みなおしゃべりとか、性的魅力とか、わあ、出身が同じじゃんとか、俺もちょうどあんたの年の頃、失業してたんだよねとか、エロ書いてくれるんだったら今日仕事出すけどねウヒヒとか、いろいろあるわけでね(勝手な想像ですが)。
それで、もし一つ仕事が取れたら、それを、もう、とにかく全身全霊で書いてください。何かに掲載されたら、それがあなたの実績です。堂々と胸を張って、その実績とともに、次の当たり先のドアをノックしましょう。
迂遠なようですが、ぼく自身はここまで書いてきた単純な方法で、収入ゼロから3年で超多忙なライター(年収でいうと、大企業の同世代に近い金額)になりました。そうそう、スタートしたのはあなたと同じ30歳の時です。
クラウドで成り上がる道も
それと、今ならクラウドソーシングという選択肢もありますよね。大手で言えばランサーズとかクラウドワークスなのかな。Webを介して登録をして、とにかく何か書いてみるといいでしょう。
最初はとんでもなく書きがいのない、そして、それ相応のギャラしかもらえない案件しかないかもしれません。でも、それでも、ちゃんとした原稿を書いていると、少し良い仕事が回ってくるようになります。ここまでは実験済みです。
さらに高いクオリティで書き続けると、企業から直接、名指しで仕事を受けられるようになります。もちろん原稿料も仕事のレベルによって上がっていくことでしょう。
これ、ぼくがライターを始めた頃にはなかった仕組みです。あの頃、クラウドソーシングが存在したら、どっぷりと浸かっていたかもしれないな、と想像することもあります。良い悪いではなく、違った未来があっただろうな、と。
というわけで、まとめ。ライターになりたいと本気で思っているとのことなので、だとしたら、原稿を書いて営業に回りましょう。それがいやなら、クラウドソーシングという方法もある。いずれにせよ、まずは書くことです。
考える前に書け!
と書いて、何か重要なことを言った気になっている、ライター歴25年の元木哲三でした。