はじめまして。真暗蔵三(まくら・くらぞう)です。
ええ、ご両親が「お先真っ暗」とおっしゃったそうで、ライターになったその先といえば、たとえばそれは「ぼく」なんじゃないかなと思って、改名してみました。喪黒福造みたいで、悪くないですね。ホーッ、ホッホッホッ。
冗談はさておき、まずライターという職業の今と未来について、少しだけ考えてみましょう。確かに「ライターはお先真っ暗」と思っている人は少なくありません。有名な出版社の倒産、長年愛されてきた雑誌の廃刊、「出版不況」や「活字離れ」という言葉は、使われすぎて飽きられているくらいです。
実際、「雑誌はいずれなくなっちゃうから」と言って廃業したライターをぼく自身、何人か知っています。出版業という業界は斜陽産業でしょうし、そこだけを見れば、ライターの仕事は減っていると言って間違いありません。
ただ、一方で、スマートフォンやタブレット、パソコンといった電子機器に表示される文章を「活字」と捉えるならば、ぼくたちは以前より多くの活字を読んでいるし、また書く機会も増えています。いまどき、文章を書かなくていい仕事を探すほうが難しい。活字の読み書きは日を追うごとに、ぼくたちの生活に欠かせなくなってきているのです。
となれば、「文章が書ける人」は、出版業界だけでなく、もっと広く必要とされる存在になってくる。これがぼくの考えです。チカラでは企業のブランディングを手がけていて、その核となるのが、ブランドコンセプトという短い文章を制作することです。また、オウンドメディアと言って、企業が自らメディアをつくるお手伝いをすることもあります。ライターの新しい仕事ですよね。
チカラでは「文章の学校」というスクールを運営しています。誰もが文章を書く時代。つまり文章の「ユーザー」が増えたわけですから、その使い方を「教えてほしい」というニーズは高まっていくだろう、との考えからです。
ほら、そんなふうに考えると、お先にちょっとだけ灯りがともる感じがしませんか。うん、やっぱり真暗蔵三になるのは、やめておきます。
ライターの年収ってどれくらい?
じゃあ、本題に行きましょう。ライターは儲かる仕事なのかどうか。
これはね、正直、ズバリ答えるのが難しいけれど、もうこの際、言っちゃおうか。
大多数の人は儲かってない!
ううう、とうとう本当のことを言ってしまった。ライターのみんな、ごめんな。でも、これからライターになるって人に、嘘は言えなかったんだよ。
ある書籍には「ライターの平均年収は400万円前後である」と書かれていますが、ぼくは個人的に「これ、正しくは平均年商じゃないか」と思っています。
フリーライターの職場は自宅だし、かかっているのは電気代くらいだし、まあ確かに経費は少ない。それでも、いくばくかはかかっているわけで、実際、確定申告の際には経費をできるだけ積み上げて、収益を限りなくゼロに近づける努力をしている人が大半だと思うのです。ああ、なんだか書いてて、悲しくなってきました。
それに、これは東京の話で、地方だともっと厳しいでしょう。ぼくが暮らしている福岡だと、フリーライターとして年間400万円を売り上げているとしたら、かなり稼いでいるほうだと思うのです。福岡でこれですから、他の地方都市は推して知るべし、です。
つまり全国で見ると、年収200万円、300万円クラスのライターがたくさんいるということ。いや、そちらのほうが主流なんじゃないか、というのが、ぼくの見立てです。
しかも、ですよ。自営業者ですから、会社員のように会社に守られていません。頼りにしていた仕事が、明日からバッサリとなくなる、なんてことも起こりえます。「そんな無体な」と叫んでも、誰も助けてはくれないのです。
ぼくの年収を赤裸々に
ぼくは東京でフリーライターとして活動を始めて、初年度は約400万円、2年目は650万円、3年目で1000万円以上を売り上げました。あくまで売り上げですが、だいたい目標通りに伸ばすことができました。年収にすれば3年目が700〜800万円といったところでしょう。
これは雑誌やムックで書きまくった上に、企業から直接、定期発行物の編集・執筆を受けていたのと、印税契約をした書籍がベストセラーになった、といったことが影響した結果です。ただし、翌年に上海に移住してしまったので想像でしかありませんが、4年目以降、同じやり方で、さらに収入を伸ばせたか、と言えば、うーん、難しかったでしょうね。むしろ維持できたかどうかも自信がない。
つまり、ぼくの感覚では東京でフルに働いて、年収800万円くらいが上限かな、という感じです。自分で言うのもなんですが、仕事はひっきりなしに入ってきて、筆もそこそこ速いほうでしたから、悪くない数字だと思いますし、逆に、一定の能力がある人でも、それくらいしか稼げない仕事だ、とも言えます。
え? 今? そうですね。フリーの時のほうが稼いでいたかな。
稼げるかどうかを判断基準にするのか
ぼく、実は30歳の時に、すごくメジャーな出版社から「社員にならないか」と誘われたことがあるんです。当時、その会社は「30歳で年収が1000万円を超える」と評判で、オファーを受けた時は、正直、どきどきしました。
でも、結局、ぼくはそのありがたいお話を断りました。ぼくはエディターではなく、ライターでいたかったし、フリーランスという働き方が自分に合っていると感じていたからです。当時は1年目の終わり頃だったから、年収が2倍に跳ね上がり、かつ大企業に勤めているというステイタスも得られたのに、それでも選択しなかった。やっぱり文章を書きたかったんでしょうね。
すでに書いてきた通り、文章力が求められるフィールドは広がっていますし、別の仕事やニーズと掛け合わせることで、ライターの能力プラスαの新しい職業が生まれる可能性は十分にあって、そこでは稼げるのかもしれません。
でもね、ぼくが今、実感として言えるのは、「儲かりたいのならば、儲かる職業を選んだほうがいい」ということです。ライターは決して儲かる仕事ではない。
そのうえで言うけど、ご両親には「俺、儲かんなくてもいいんで、やりたいことやるわ」と告げればいいんじゃないかな。もう、親の言うことなんて、聞かなくていいよ。悩む暇があったら、原稿を1本、書いてみてはどうでしょう。
ドーン!